いきなり、仰々しいタイトルになってしまいましたね。
でも、誰しもが気になるタイトルかと思います。
まず、下の順位をご覧下さい。
- 1位:悪性新生物
- 2位:心疾患
- 3位:脳血管疾患
- 4位:肺炎
- 5位:老衰
これは平成21年の厚生労働省の発表結果です。
これかの結果から健康とは何かを考えて行きましょう。
男女別死亡順位
次は男女別の順位を見てみましょう。
まずは男性から
- 1位:悪性新生物
- 2位:心疾患
- 3位:肺炎
- 4位:脳血管疾患
- 5位:不慮の事故
そして女性はこんな結果です。
- 1位:悪性新生物
- 2位:心疾患
- 3位:脳血管疾患
- 4位:肺炎
- 5位:老衰
男女共に1、2位は同じですね。
2位はなんとなく心臓の病気のイメージが浮かぶように、3位以降もだいたい分かるかと思いますが、1位の悪性新生物ってなんでしょうが?
では、まず1位「悪性新生物」について見てみましょう。
悪性新生物(あくせいしんせいぶつ)
悪性新生物なんて不思議な言い方だと思いませんか?
悪性はともかく、”新生物”なんて言い方は宇宙から飛来した細菌やウィルスみたいですね。
ちなみに「悪性新生物」は「癌(がん)」の事です。
そういう意味ではエイズ(AIDS)なんかは、新生物という名が合ってたかも知れません。
ただ、「がん」が先に「新生物」を付けてしまったので、おそらく後に発見(発症)されたものに「新生物」は付けられなかったのでしょう。
この「悪性新生物」という言い方は普段しませんよね。
ほどんど「癌」で会話していると思います。
保険だって、「がん保険」といいますから。
ここで、上の文中で気になる表現があったかも知れません。
「癌」、「がん」の2通りの表現をしていることです。
実は、医学的には「癌」、「がん」は使い分けているのです。
こんな感じです。
- 癌 :上皮細胞由来の悪性腫瘍
- がん:「癌」+「悪性の肉腫」+「白血病」+他
次々に難しい言葉が出てきて嫌になりそうですが、少しずつ紐解いていきましょう。
まず、上記2つの癌(がん)は悪性です。
まず、癌(がん)は「悪性(腫瘍)」、「良性(腫瘍)」という言い方をし、医学では良/悪、善/悪などの対比する言い方をしたりします。
例えば、善玉コレステロール、悪玉コレステロースもその1つです。
実はコレステロールの悪玉は、それほど悪ではなく、「泣いた赤鬼」の話の青鬼に通じるものがあると思ってます(この例えは完全な主観ですが、悪玉コレステロールが暴れるのには訳があります)
良性腫瘍(りょうせいしゅよう)
良性腫瘍は次のような特徴があります。
- 膨らむように大きくなる
- 増殖スピードは比較的ゆっくり
- あまり転移しない
- 一度、切除してしまえば再発の可能性はほとんど無い
代表的なものとして
腺腫(胃腸や乳腺などの粘膜や内分泌腺にできる)、脂肪腫(「こぶ」のようなもので肩、背中の脂肪細胞にできる」があり、他には「子宮筋腫」、「おでき」
などがあります。
悪性腫瘍(あくせいしゅよう)
悪性腫瘍は次のような特徴があります。
- 周囲の組織に食い込むように広がる
- 増殖スピードは比較的早い
- 転移することもある
- 一度切除しても再発するケースもある
- 早いスピードで成長する為、他の細胞への栄養、酸素が不足し、全身的な影響が現れる(短期間で生命に危険が及ぶ)
これで、なんとなく「良性/悪性」の違いはイメージできたと思います。
では、そもそも腫瘍(しゅよう)ってなんでしょうか。
腫瘍(しゅよう)
腫瘍は細胞の一種です。(だから「がん細胞」などと言います)
細胞は人間を構成する重要なものです。(詳しくは「人間は生きた「LEGOブロック」である」をご覧ください)
場所(部位)によって異なりますが定期的に新しい細胞に入れ替わります。
新しい細胞は外部から取り込むのではなく、もとの細胞が分裂して作り出します。
皮膚細胞なんかは20代前半で約1ヶ月で交代します。(10代はもっと早い周期で入れ替わりますので肌がスベスベなんでしょう)
ちなみに年を重ねるごとに入れ替わる周期は遅くなってきます。(だから、ガサガサ?)
細胞の中には、その細胞の役割(働き、寿命)などが書かれたDNA(設計図)があり、分裂する際、そのDNA(設計図)もコピーされて新しい細胞に組み込まれます。
この分裂前の細胞が何らかの原因により。DNAが損傷し、情報(役割)が変わってしまっていたら、分裂した新しい細胞も傷ついたDNA(設計図)がコピーされているので役割が変わった細胞になってしまいます。
通常、細胞分裂した後、分裂前の細胞はお役御免となり、自分で消滅するように設計(DNA)されているが、何らかの原因で、その消滅設計図(DNA)が書き換わっていて機能しなかったとしたら、細胞はそのまま存続することとなる。
その設計図(DNA)が変わってしまった細胞が周期的に細胞分裂を繰り返し、元の細胞は消滅しない状態であったら、その細胞はネズミ換算式に増えていきます。
この無秩序な暴走した細胞を「腫瘍(しゅよう)」と呼びます。
次々と増殖した腫瘍はある程度の塊になってくるとレントゲンなどの検査で影として存在をあらわにします。
こうした腫瘍も栄養・酸素を取り込む為、増殖し続けると周りの正常な細胞を脅かし、機能が果たせなくなり「機能不全」などの危険な状態に陥ってきます。
この為、切除手術などで腫瘍を取り除きますが、少しでも取り切れないと再び細胞分裂して増殖し続けてしまいます。
DNA修復機能
そもそも、細胞内のDNA損傷はどのような原因で発生してしまうのでしょうか?
それは大きく2つに分類されます。
- 細胞内の機能によるDNA損傷
- 細胞は酸素、栄養を取り込んで生きていますが(エネルギー生成)、このエネルギー生成の際に発生してしまう活性酸素による損傷
- 細胞外からの影響によるDNA損傷
- 紫外線、X線、ガンマ線などの電磁波による損傷
- タバコなどの人工変異原生物質による損傷
- 食品中の化学物質
- 大気汚染、排気ガスによる損傷
なお、DNA損傷は1細胞につき、1日に数万〜数十万回とも言われていますが、細胞自身に損傷したDNAを修復する機能があり、ほとんど修復されます。
また、修復できない大きな損傷は細胞自身が自滅(破壊)する機能がある為、基本的に損傷したDNAの状態で増殖することはありません。
しかし、生活習慣、食物環境などで細胞が弱っていたりすると、「損傷DNA > DNA修復数」、という事になり、損傷したDNAを持ったまま細胞分裂していくことになります。
当然、DNAの損傷パターンによって腫瘍にならない(無秩序に増殖しない)場合もあります。
結論としては、腫瘍は無秩序に増殖し続け、周りの正常な細胞の機能を脅かしてしまう可能性がある細胞ということになります。
なお、先に述べました通り、悪性は増殖が早く、転移する可能性がある腫瘍であり、良性は増殖が遅く、転移の可能性が低いといった腫瘍です。